日本人は、“can = できる”という、実際にはほとんど使わない文法に囚われている。
というお話を前回しました。
英語ネイティブであれば、“can = ~してもよい”という意味で使うことがほとんどなのですが、
そうでない例外があります。
ネイティブとは言えませんが、まあ、準ネイティブといっていいでしょう。
シンガポール人にとって、can は「できる」という単語そのものとして扱われています。
シンガポールは、フィリピンと同じく、英語がほぼ標準語(公用語)として流通しています。
インドや香港のように、一部のエリートやホワイトカラー、観光業に携わる人間だけではなく、
それこそスーパーでレジを打っているおばちゃんや、タクシー運転手なども、
普通に英語を話すという点で、これらの国は準ネイティブといっていいでしょう。
さて、シンガポール英語ですが、Singlishと言われるくらいに独特の語彙、文法、
そしてイントネーションがあることでよく知られています。
この独特の英語は、ノンネイティブ(私のような立場の人間ですね)泣かせなのです。
まあ、有り体に言うと、えらく訛ってるんですわ(笑)
けれども、彼らは英語をほぼネイティブとして話すため、スピードも速い。
最初は慣れるまでにかなり時間がかかりました。
外資系企業に勤めていた時、アジアのヘッドクォーターがシンガポールにあったため、
毎日のようにシンガポールオフィスのスタッフと電話でやりとりしていました。
また、何度も出張でシンガポールに行くうち、彼らの英語にも慣れた私です。
そのシンガポール英語ですが、can にまつわる面白話があります。
当時の私の上司Mさんが、シンガポールのバーでビールを注文した時のことです。
以下、その会話(M: Mさん、B: バーテンダー)
M: Can I have a beer?
B: Can.
M: No, not a can. A draft, please.
B: Can.
M: No, no, no. Draft!
B: Can!

さて、おわかりでしょうか。
Mさんはドラフト(生)が欲しいのに、バーテンダーは can(缶)の一点張り。
ここには、決定的なコミュニケーションブレイクダウンがあります(笑)
シンガポール英語では、can は“Yes, I(we) can.”を意味します。
つまり、バーテンダーは、ビール下さいと言われて「Okay」と言ったんですね。
でも、英語ネイティブからすると、can をそういう風に使うことがないので、
この場合、話題がビールだし、can = can of beer、つまり缶ビールだと取ったわけです。
で、カンじゃなくて生でお願いします、と言い直したところ、
またしても「Can」と念押しされたため、いやいやそうじゃなくて、ドラフトだってば!
とまるで吉本新喜劇のようなやりとりになってしまったわけです。
最近は、オバマさんのスローガンもあって、“Yes we can!”といったcanの用法が
かなりクローズアップされていますが、本来はそういうcanの使い方はマイノリティーなんですね。
だから、上記のような、おかしな状況が生まれるわけです。
実際、私も気付いたことですが、シンガポール人は何かにつけ、「Can, can!」と言います。
Yes」とか「Okay」というニュアンスなのでしょうけれど、
最初は違和感を覚えたものです。
ところ変われば英語も変わる。
今回は、Singlishにまつわるお話でした。
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