Hのリダクション

回答:I don’t (like her). 彼女の事が好きじゃない。

I don’(t) like’(h)er. (アイドンライカァ)というように聞こえますね。
ここではTとHの音が落ちています。

I don’t know.をアイドンノウと発音できる人は、多いと思います。
なので、I don’t knowを聞き取れない人はほとんどいないのです。

では、herのHが落ちることを知っていますか?
ここでは、like の“k”の音と続く“er”の音が繋がって、liker となっています。

回答:(Tell him to) come here. 彼にここに来るように言って。

Tellim (テレム)と聞こえますね。ここでも同様に、Hのリダクションが起こっています。
him や her といった人称代名詞や、haveやhasといった動詞は、Hが落ちて“’im”“’er”となることが多いのです。



Tのリダクション

回答:So you (want to go to the) game? じゃあ、試合(を見)に行きたいの?

want to がしゃべり言葉では“wanna”になるというのはある程度英語をやって来た人なら、ご存じなのではないでしょうか。
ウォントゥ~ではなく“ワナ”、と音が変化することを知らないと、聞き取れません。

もう一点、注目すべき点は go to の to の音です。
ここでもTのリダクションが起きています。

このTは、いわゆる“フラップ(flap)”と呼ばれる、舌を軽く口蓋に触れるだけで破裂させない発音です。
これは北米アクセントの特徴で、water がウォーターではなく“ワラ”みたいに聞こえる、というのは多くの日本人が知っているところだと思います。
このフラップ現象は、あちこちに発生します。ゴゥトゥではなく“ゴゥル”みたいな感じに発音するのがポイントです。

回答:(What am I going to) wear? 何を着ようかな。

wanna (want to) 同様に、going to がしゃべり言葉では“gonna”になる、というのも定番ルールです。
ゴ~ウィントゥではなく、“ガナ”となります。

また、ここは音がリエゾンしているのもポイント。
「ワット アム アイ ガナ」みたいに、音を区切ってはいけません。
英語は常に、音がつがなっていきます。
Wat-tam-mai-gonna というように、子音と次の母音が繋がるので、“ワダマイガナ”みたいな音になります。

回答:(Are you ready to) order? ご注文よろしいですか?

最初のAre you にストレスが乗らず、ready に一拍目が来ます。
この裏打ちのビートが、英語のリズムです。ア~ユ~レディではなく、“ァュレディ”。日本語は平坦に、なおかつ均等にリズムを取る言語です。♪タン タン タン♪と、三々七拍子を打ってみましょう。手拍子がすべて均等でしょう?

英語は、♪タタタ~ン♪のように、不規則なリズムです。このリズムに慣れることが重要です。

また、ここでも“to”がリダクションされて、“ル”みたいな音になっていますね。
go to の時もそうでしたが、前置詞や不定詞のtoは、リダクションされることが多いのです。



その他のリエゾンとリダクション

回答:(Where did you) get those? それどこで買ったの?

Where did you の部分が、“where’d you”とリダクションされています。
疑問詞のwhereの発音はwere(areの過去形)と同じです。
また、DとYがリエゾンすることでJの音になり、“ワァジュ”となっています。

回答:(What does that) mean? それどういう意味?

What does that の部分が、“what’dz that”のようにリダクションされます。
ストレスの位置にも注意してください。
thatに最初の一拍目が来るように、リズムを意識するのがポイントです。

回答:He (wouldn’t have said that) if (he’d known about) the accident. あの事故のことを知ってたら、彼もそんなこと言わなかったんじゃないかな。

仮定法は、日常会話で非常によく出てくる構文です。
また、リダクションが起こるため、慣れていないと全く聞き取れません。

wouldn’t have が“wouldn’(t) (h)ave”となり、TとHのリダクションが起きています。
つまり、“wudn-nov(ウォドゥンノヴ)”のようになります。
saidとthatの語尾のD/Tは、発音せずに寸止めしましょう。

“セッザッ”のように。
he’d known about も、同様にリエゾンとリダクションが起こります。
he’d の語尾のDは寸止め、known aboutはリエゾンして“known-nabout(ノウンナバウッ)”となります。

回答:I was (kind of) hoping maybe (you could come over) and talk to me. 私のところまで話かけに来てくれるんじゃないかって、なんとなく期待してたのよ。

kind ofは、口語で“kinda”とも書かれることがありますが、これもよく話し言葉で使われる慣用句です。
日本語にすると、“~みたいな(感じ)”“~とか”というニュアンスです。ここでもDのリダクションが起こり、“カインナ”となります。
come over も音がつながって、“c’m-mover(カモウヴァ)”となっていますね。

ドラマや映画の英語が、なかなか聞き取れないという人は、こういった発音のルールを知らないことが原因です。
どれだけ長時間英語を聞いても、ただいたずらに聞き流しているだけでは、音は右から左に流れていくだけです。
日本語は、子音と母音がリエゾンする言語ではないため、このルールをきちんと理解し、慣れていくことが重要なのです。