私は以前、もう十数年前になりますが、英語と日本語を教えていたことがあります。ある大手英会話スクールで英語講師をしながら、日本語も教えていたのでした。その英会話スクールは、トップのずさんな経営とバブルに踊らされて不動産に手を出したりしたために、あっけなくつぶれてしまいましたが、当時はそこそこ有名なスクールでした。そこで私は日本人に英語を、欧米人に日本語を教えていました。
その時にしみじみ思ったのが、母国語がなんであるかによってその人の学習傾向に違いが出るということでした。どういうことかというと、英語を母国語にする人たちと、日本語や韓国語を母国語とする人たちとでは、言葉に対する姿勢やとらえかたが違うということです。ざっくばらんに言うと、英語を母国語とする人たちは耳が良い。また、聞いたことをすぐに口に出して言いたがるという傾向があります。それに対して日本人はとにかく目に頼りがちで、「今のを黒板に書いてください」とやたら板書するよう訴えてくる。
この傾向は韓国人や中国人にも顕著に見られました。ペアワークなどをさせても、欧米人は積極的に話そうとするのに対し、アジア系の人は(日本人も含む)あまり乗り気ではありません。けれども、読んだり書いたりすることには非常に情熱を燃やします。これは、どちらが良いとか言う問題ではなく、言語的または文化的な違いです。こういう傾向は、外国語を学習するうえでも無視できない要素だと思います。
欧米人がコミュニカティブな方法で外国語を学ぶのに対し、日本人は英語を暗記中心でやってきました。これは時として大きな批判に晒されましたが、はたして100%間違った学習法とは言い切れないのではないかと私は思っています。というのも、上記のように日本人は聴覚よりも視覚を頼りに言葉に接しているきらいがあるからです。いくら「Repeat after me!」とやっても、文字を見ていないと不安になるのが日本人です。逆に、読めなくても書けなくてもとにかく喋ったもん勝ち、というのが欧米人なのです。
ある時、欧米人のグループに日本語を教えていたら、思わぬ質問に会いました。
「ありがとうございます」という表現を教えていたのですが、リピート練習させようと思ったら生徒の一人が手を挙げてこんなことを言ったのです。「先生は今、A-ri-ga-to-u-go-za-i-ma-sと言いました。でも、さっきはA-ri-ga-to-u-go-za-i-ma-suと言いました。どちらが正しいのですか」
この質問に、私は戸惑いました。
まさか、そんなところを突っ込まれるとは思ってもみなかったからです。
最後の「す」を「su」と発音せずに、「s」と発音していた、という細かい部分をその生徒は目ざとく(耳ざとく?)気づき、質問してきたのです。はたして、どう説明すればよいものか。
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