英語を習得するうえで欠かせないのは、品詞を理解することです。
ええっ、何それ、そんな文法用語は難しくてやだよ~と思った人。
ちっとも難しくなんかありません。文法アレルギーに陥ってしまうと外国語はマスターできません。まずは、堅く構えず気楽にお話を聞いてください。品詞というのは、名詞だとか動詞だとか形容詞だとかいった、言葉の属性のことです。日本語で例を上げてみましょう。名詞とは物の名前、すなわち、りんご、机、電車、といった目に見える物から、美意識、プライド、物欲、といった目に見えないものまで幅広くあります。
名詞の中でも特定の名前を指すもの、たとえばアインシュタインだとか東京都といったものを固有名詞と呼び、これらは頭文字がキャピタライズ(大文字)されます。また、固有名詞には冠詞(aとかthe)はつきません。これは基本的なルールですね。名詞に関しては、日本語も英語もあまり差はありません。物の名前、と単純に理解すればいいのです。では代名詞はどうでしょうか。
代名詞とは文字通り名詞の代わりになるものです。これ、日本語にはあまりない概念なんですね。というのも、日本語は名詞を一々言い換えるということをしないからです。たとえば、次の文章を見てみましょう。
昨日同僚と飲みに行ってさ。そしたら彼がすごく酔っちゃって。彼を介抱してたら、いつの間にか終電がなくなってたんだよね。
どうでしょう。
なんか、不自然な感じがしませんか?
そう、一々「彼が」とか「彼を」と代名詞を入れるのが不自然なんですね。日本語の場合、こういうかたちで「彼」「彼女」といった代名詞を使うことはまずありません。それが英語との大きな違いなのです。なので、「昨日同僚と飲みに行ってさ、そしたらそいつがすごく酔っちゃって、介抱してたらいつの間にか終電がなくなってたんだよね」という風にすると自然な感じになります。「そいつ」と訳しましたが、ここは人間関係によって言葉が変わってきますね。さして親しい人でないのであれば「その人」となるでしょう。では、これを英語で言ってみるとどうなるか。
I went out to drink with my colleague last night. He got really drunk, so I had to take care of him. I didn’t realize I missed the last train.
英語の場合は、colleague(同僚)という単語が最初に出てきますが、その後はずっとheで受けます。この同僚が女性の場合は、もちろんsheとなるわけです。さて、カンの良い方ならお気づきかと思いますが、英語の代名詞はhe、sheというように必ず性別がわかるようになっています。そいつ、とかその人、とか、上司、とか、友達、といったように常に名詞を使う日本語とは違うのです。
なので、「あなた、昨日誰と会ってたの?」と問い詰めたりした場合、「友達とだよ」とごまかすことができない。「友達って?」「Patだよ」「Patって誰よ」「学生時代の友達だよ」「その人とどこに行ってたの」「六本木のバーだよ」というように、日本語だとPatという友人が男なのか女なのかわからないまま会話が成立します。これが英語になるとそうはいかない。
“Who did you go out with last night?”
“I was with Pat.”
“Who’s Pat?”
“She’s my friend from school.”
“So where did you go with her?”
“We went to a bar in Roppongi.”
というように、She、her、という単語を省略することはできないのです。つまり、相手が男性であるか女性であるか、いちいち聞かなくても英語という言葉の性質上勝手にわかってしまう。このあたり、曖昧な日本語とは違い、英語は嘘をつきにくいのではないかと私は思うわけです。かほどに、英語において代名詞というのは重要な位置を占めるのです。彼を、彼に、彼の(him、his)といった表現をしない日本人にとって、これら代名詞は単純なようで案外あなどれない存在なのです。
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代名詞は浮気防止になる?
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