8月19日付のThe Economistの記事に、興味深いことが書かれています。
原文はこちらで読めます⇒Japan as number three
日本がついに世界第2位の経済大国の座から転げ落ち、中国に取って代わられた。
はたして、日本経済は立ち直れるのか、という分析です。
Life is beautiful
この記事は非常に簡潔で明瞭な英語で書かれているので、読みやすいと思います。
英語で論文や作文を書くときの、お手本にできるでしょう。
まず、日本語での作文との大きな違いは、日本語が最後に結論を持ってくるのに対し、
英語は最初に結論とテーマを述べ、それから順に詳細を述べていく、ということです。
エコノミストのJapan as number threeを手本に、詳しく見ていきましょう。
1st paragraphで、5年前は中国経済は日本の半分の規模だったが、今は日本を追い越した、とあります。
これが今回の主題であり、なぜ日本がそうなってしまったのか、どういった問題を抱えているのか、
といった詳しい検証はその後になります。
2nd paragraphでは、中国は日本の10倍の人口とはいえ、
20年前は世界1位もありえるのではと言われていた日本がこのような状況になっているのは由々しきことであり、
この先それはさらに悪化する可能性もある、と述べられています。
5th paragraphで、いよいよ原因、問題について詳しく取り上げています。
日本の抱える問題、それは、
Japanese bosses are complacent.
They are either too afraid to face the reality of the power shift, or want to stick to old, familiar models.

日本の上層部は、現状を変えたがらない。時代の移り変わりという現実の直面するのが怖いか、
または昔の家族経営的なやりかたに固執している。
とあります。
ここから、記者の容赦のない、手厳しい内容が続きます。
まあ、最後まで読んで、おっしゃるとおりでございます、本当にどうしたらいいのでしょう、
という気分になりましたが(苦笑)
Yet the core problem is that Japan suffers from a gross misallocation of resources, both financial and human.
日本が抱える本質的な問題は、お金と人材、両方の面でまともに使えていないことだ。
さらに、具体的に例を挙げて行きます。
Food for Zombies -ゾンビを保護し、生きているものを殺す日本政府のやり方
金融危機を乗り切るために取った、日本政府の誤りを手厳しく批判しています。
典型的なお役所仕事、もはや死にかけている大企業に手を差し伸べ、
ベンチャー企業が育たない風土が今の日本の下降線を作った。
8th paragraphでは、日本人の識字率の驚くべき高さや、計算能力をもってしても、国の衰退を止められない理由として、
Respect for seniority means that promotions go to the older, not the most able.

年功序列制度のおかげで、実力のあるものではなく年配者が出世するシステムになっていること。
さらに、9th paragraphでは、
Japanese salarymen, who were once regarded as modern-day samurai, are today known as soshoku-danshi (wussy, unambitious “grass-eating men”).

かつては現代のサムライと呼ばれた日本のサラリーマンは、今や草食男子と呼ばれる、
野心のない腰ぬけになりさがってしまった。
Even a foreign-ministry official confides that Japanese diplomats prefer to stay at home.

外務省の役人ですら、海外に行きたがらない。
と、一刀両断。
面白いのは、草食系男子というのを、野心というかたちで捉えているところだと思います。
日本ではどちらかというと、性的におとなしい、つまり、積極的に恋愛にガツガツしていない、
というよりも、怖くて自分から動けず女性からアプローチしてくるのを待っている腰ぬけ受け身な男性、
という意味で使われる言葉ですが、
ここでは、サムライみたいに敵に向かっていかない、チャレンジ精神や野心のないサラリーマン、
というように解釈されています。
10th paragraph 日本は他のアジアと比べて、グローバル化が遥かに遅れてしまっている。
Since 2000 the number of Chinese and Indians studying in America has doubled, whereas the number of Japanese has dropped by a third,
2,000年と比較して、中国人、インド人のアメリカ留学者はの数は倍増したが、日本は3分の1も減っている。
And despite years of mandatory English-language classes in secondary school, the Japanese score lowest among rich countries on English tests.
中学高校で英語が義務付けられているにもかかわらず、日本人の英語のスコアは先進国の中で最低である。
日本は、資源を海外に頼るよりほかはないわけで、これはまずい状態ではないか、と結んでいます。
11th paragraphでは、さらに、この国の抱える問題を分析しています。
Half the nation’s talent is squandered. Only 8% of managers are female, compared with around 40% in America and about 20% in China.
国の才能の半分が無駄にされている。日本の女性管理職はたったの8%しかいない。
これは、アメリカの40%、中国の20%とくらべると明らかに低い数値だ。
There are more women on corporate boards in Kuwait than Tokyo.
東京の女性役員の数は、クウェートより少ない。
求人に応募してくる人のうち、まともな人の70%が女性だが、女性にふさわしい職場ではないという理由で、
選ばれるのはたったの10%にも満たないという例もある。
キリンビールは、2015年までに女性管理職の数を2倍にすることを目標に掲げているが、
それでも全体のたったの6%にしかならない。
12th paragraphでは、日本の抱える問題は複雑に色んな事情が絡み合っているので難しいと言っています。
Japan has trouble tackling its problems because they are all inter-related. “It is hard to fix one without fixing the others,” he says.
日本は、「どれか一つを解決しようとすると、別の問題をまず解決しなくてはならなくなる」という、
すべてが入り組んだ状態にあるために、なかなか現状を打破することができない。
そして、13th paragraphでは、メディアの呑気ぶりとこの先の危機についても触れています。
The local news media have played down Japan’s slip to third place.

日本のメディアは、この3位転落についてさほど大きく取り上げていない。

Alarmists fear that South Korea—which has a much smaller population—may overtake Japan, too.

次に来るのは韓国ではないかー日本よりずっと人口の少ないこの国に、追い越される日も遠くないのでは。
最後に、こう締めくくっています。

Supporters say that the country always seems to shuffle its feet but then snaps into action when faced with a crisis.

日本は、いつも危機にさしかかった時には、どうにかしてきたから大丈夫だと主張する人もいる。
19世紀に開国を迫られ鎖国を解き文明を受け入れたこと、第2次大戦後も同様にうまくやってきた。
そして、戦後40年に渡り、世界第2の経済大国の座を死守してきたのである。
けれどもそれは20世紀の話であって、もはや21世紀には通用しない。
Today, Japan’s biggest obstacle is itself. Without dramatic reform, it will slip swiftly to number four, number five and beyond.

今日、日本の最大の障害は、日本自身である。
劇的な改革をしない限り、これから第4、第5位とさらに転落の一途を辿ることもあるだろう。
とまあ、ほんに、言いにくいことをズバッと言ってくれた、という感じですね。
けれども、これはさして経済に明るいわけでもない私ですらぼんやりと思っていたことなので、
まあ、そりゃそうだろうと思うわけです。
お上は、何としてでも日本人を「英語が読めない(話せない)」ままにしておきたいようですが、
そうこうしているうちに、この国は沈みつつあるのに、どうするんでしょう?
以前、ヨーロッパ系企業に勤めていましたが、役員会、取締役会を見ると、
そのうち半分くらいは女性でしたし、30代のdirectorsなんてごろごろいました。
それが、電気関係の超有名日本企業に呼ばれてミーティングに行ったとき、
10名以上いたその会社の幹部は全員が男性、しかもオジサンばかりでした。
これって異常だ、と感じたことを、いまだに鮮明に思い出せます。
また、海外メディアが日本の転落を大きく扱っているのに対し、
当の日本は呑気というか、この深刻な事態を軽んじている節があるというのも、
まったくその通りだと思います。
メディアが取り上げるのは、中国人観光客の隆盛ぶりだったり、彼らのマナーの悪さだったり、
本質的なこと(日本が中国に抜かれたという事実)を、中国企業がどんどん日本企業を買収していることを、
さほど大きなニュースとしては報道していないように思われます。
こういう認識の低さも、日本の衰退ぶりに拍車をかけているような気がします。
さて、日本人としてはとても痛い記事ですが、English writing (critical writing)の題材としては、
非常によい例だと思いましたので、取り上げてみました。
これくらいの文章を、ザザッと読む(大意を掴む)訓練をしておくのは、
TOEICのリーディング対策にもなりますし、有効だと思います。
まとめると、
① 論旨、主張を最初に持ってくる。
② その理由やデータを具体的に出し、説明する(ここが本体部分)
③ 締め-結論とこの先の提案を出す。
というのが、英語のライティングの一般的なパターンです。
以上、Japan as number three、でした。
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