英語ブログを書いていると、必ずと言っていいほど話題に上るのがTOEICです。
TOEICとはもちろん、Test of English for International Communicationの略です。
つまり、国際的なコミュニケーションのための英語力を測るテスト、なわけです。
現代日本において、英語の資格と言えばイコールTOEIC、という感じで、
ある意味猫も杓子もTOEIC状態なのは否めません。
国際コミュニケーションだから、さぞかし全世界で有名なテストなのだろうと思いきや、
実際にTOEICが認知されているのは日本以外だとフランスくらいのもので、
意外や意外、それほどメジャーな資格ではないのです。
北米では、英語の資格と言うとまずTOEFLがあります。
ヨーロッパに行くと、ケンブリッジ英検やIELTSのほうがメジャーです。
つまり、TOEICというのは世界的に見ると極めてマイナーな英語資格なのです。
では、なぜ日本でここまでメジャーになったのか。
それはもちろん、様々な政治的背景があるわけですが、ここではそれはおいといて、
というよりもちょっと怖くて書けないので(笑)、別方面からお話をしたいと思います。
かつて日本における英語の資格と言えば、なんといっても英検(実用英語技能検定)でした。
今でも地方のほうだとまだ若干こちらのほうが優勢ではないかと思います。
東京や大阪といった都市部では、すでにTOEICのほうが資格として大きな意味を持ちます。
実際、就職の際など、レジメ(履歴書)に英検を書いてもあまり意味はないと言われたりします。
受験英語に特化した英検よりも、コミュニケーション能力を問うTOEICのほうが実用性が高く、
雇用する側の企業としては、そちらを重視する傾向があります。
これは90年代以降顕著になってきました。
英語を目指す人なら誰しもTOEICを目指す、という傾向は今も続いています。
私は、かつてイギリス系の語学出版社にいましたが、
言語学者や英語教授法(TESOL)関係者はなぜかTOEICを非常に嫌うというか、
軽視するきらいがあります。
この傾向は特にイギリス人に強い。
彼らが口をそろえて言うのが、
TOEICにはスピーキングとライティングがない
ということです。
言葉というものは4技能(話す、書く、聞く、読む)すべてそろって初めて成立するのであって、
そのうちの半分(つまりリーディングとスピーキング)しかテストされない試験など意味がない。
というのが彼らの言い分です。
私は、この主張には半分は同意しますが、残りの半分はちょっと違うのでは、と思っています。
確かに、言葉は4技能できて初めて一人前と言えるでしょう。
そういう点では、TOEICはいわゆる4技能を測る試験ではありません。
がしかし、はじき出されるスコアから、その人の大体の言語能力を見ることは可能だと思います。
もちろん、TOEICで800点以上あるからといって、必ずしもその人が流暢に話せるかと言うと、
そうではないこともしばしばあります。
というのも、話す能力と聞く能力は別物だからです。
「言ってることはほとんどわかるけど、うまく話せない」というパターンも大いにあり得ます。
ここで重要なのは、TOEICはそういう類のテストである、という認識だと思います。
また、TOEICには高得点を取るためのスキルというか、コツというものがあります。
それを押えておかないと、ぼんやり受けただけでは思わぬ落とし穴にはまることもあるのです。
実際、私の友人のネイティブ(アメリカ人とカナダ人)は、満点が取れなかったと嘆いていました。
彼らはネイティブですが、どこかでケアレスミスをしたり、引っかけ問題に引っかかっていたのです。
それともう一つ。
TOEICで950点以上持っている人は、かなりの英語力の持ち主です。
知識量も膨大ですし、語彙力も極めて高い。
そうでないと、満点に近い点数は絶対に取れません。
そういう人はほとんどの場合、スピーキング力も高いことが多いのです。
少なくとも私は、これまでの人生で、TOEIC900点以上のスコア保持者で話すのが全然ダメ、
という人にお目にかかったことはありません。
800点そこそこだと、これはまた少し微妙なんですけどね。
なので、資格試験としては有効ではないという主張には、賛成しかねるのです。
600点くらいから800点くらいまでのスコアの人は、確かに個人差がかなりあります。
600点くらいでも結構話せる人と、800点あるのに話すのがからっきしの人、
というのをこれまで英語を教えてきて何度か目の当たりにしてきました。
なので、そこだけをついて、意味のない資格試験だという人もいるのでしょう。
もうひとつ、TOEICは800点を越えてからのスコアアップがかなりしんどいんですね。
それはやはり、そこまでのレベルに至ると、どうしても総合力がないと点数が取れない、
というのが言語の持つ特性なのではないかと思います。
私の友人のTOEIC専門家、神崎正哉さんは何度も満点を取っていて、心から尊敬しますね。
私は試験と名のつくものが嫌いなので(笑)、遥か昔に受けたきりです。
最近、ツイッターでTOEIC批判のような記事が紹介されているのを見たので、
私の思うところを綴ってみました。
TOEICはそれなりによくできたテストだと思います。
これがすべてではないと思いますが、英語を勉強する人には良い指標になるのではないでしょうか。
私も、今年あたり久しぶりに受験してみようかな。
受験料も下がったことだしね(←そこかいっ)
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TOEICについて
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TOEIC熱は韓国と日本がメインのようですね。
でも仰る通り、TOEICのスコアをどう捉えて次にどのように英語力を向上させるかが重要だと自身の体験からも思います。
900点を取ればネイティブ並みになると信じていたらSPEAKINGもWRITINGもダメで勉強し始めたのがTOEFLにも繋がっていますが、まずTOEICのハイスコアを目指さなければそれも無かった訳で。
先生の仰る通り、一概にダメということよりも、英語を習得するどのフェイズでどのように有効活用するかを考えるのが建設的だと思います。関心を持ったりmotivationを維持するのにTOEICはとっつき易く日本人には良い試験ですよね。
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>msさん
ライティングは難しいですね。
話すのはごまかしが効きますが、書くとなるとそうはいきません。
それは、母国語(日本語)でも同じですが。
一般的に、ESL(英語圏に住みつつ英語を勉強している)の場合、
聞く⇒話す⇒読む⇒書く、の順で、
EFL(非英語圏で英語を勉強している)場合は、
読む⇒聞く⇒話す⇒書く、の順に伸びて行くように思います。
もちろん個人差はありますが。
TOEICは良い指標ではあると思いますが、
それだけを目的にするのはちょっと違うかな、と思いますね。
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仰る通り、writingは私もまだまだ苦労しています。半年くらい複数の講師から添削を受けていますが、「graduateレベルを目指すならこんな言葉を絶対に使うな」とか片っ端から矯正されました(and so on.とか前置詞で文を切った時など勿論ボロクソに叱られましたw)。
TOEICできっかけを得た後に続く道が日本の英語学習者にはバラバラなのがネックかもしれませんね。試験を通じてまともなレベルで学ぶならTOEFLか英検1級くらいになると思いますが(準1は昨年取りましたが、writingとspeakingのテストのレベルが中途半端過ぎます)、これらでは難し過ぎて大半が挫折してしまいますよね。話すことと書くことを適切に学べる機会が不足していて、しかも会話は酷いビジネスに占拠されているのが難ですね。何かこれらの隙間を埋めるものが必要ではないかと考えます。
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>msさん
大学院レベルのライティングは、ある意味特殊です。
母国語でもそのレベルで論文を書ける人間なんて一部のエリートだけですから。
すべての外国語学習者がそのレベルに到達する必要はないと私は思います。
ただ、日常的に書くという行為、手紙だったりメールだったり、そういう文章がさらさらと書けるレベル。
それを目指すべきではないでしょうか。
そして、それをきちんと指導している学校は少ないのが現状ですね。
マスターレベル以上の論文に関しては、比較的小規模な英会話スクールで、
SATやGMATを教えられる日本人講師に習うのが、一番いいのではないかと思います。
あとは、個人塾ですね。