聞き流すだけで英語がわかるようになる、という学習法がちまたで流行しています。
これは何も最近出てきた学習法ではありません。
20年以上前にも、同じような教材がありました。
それは、イングリッシュ・アドベンチャーという教材で、
「家出のドリッピー」「追跡」「ゲームの達人」など、
名優オーソン・ウェルズがナレーションを担当した、
ひたすら聞き流すだけの学習法でした。
さて、これらの学習法は本当に効果があるのか。
文法や語彙を覚えることなしに、成人学習者がただひたすら聞き流すだけで
ある日突然脳が英語にスイッチしてくれるのか。
答えはイエスでありノーであります。
聞き流しているうちにある日突然耳(脳)が英語にスイッチするようになるためには、
相当量を聞かなくてはなりません。
まず、1日最低3時間は英語を聞き続けないといけません。
1日3時間です。
これ、言うが易しですよ。
実際、朝から晩まで仕事をしている人が、1日に3時間英語を聞き続けられるか、
という現実的な問題があります。
それも、まったく意味のわからないものを延々聞き続ける。
これはかなりの忍耐力が必要とされます。
実は、私はこの学習法を一度試したことがあります。
学生の時でした。
英語のディベートのクラブに入っている友人が、
イングリッシュアドベンチャーのテープ(テープというところに時代を感じますね 笑)を
貸してくれたのです。
そこで、数か月続けてみました。
大学までの通学時間は約1.5時間。
そのうち正味テープを聞けるのは1時間として、往復で2時間。
帰宅してから夜寝るまでに1時間テープを聞く。
それ以外でも常にステレオには洋楽を流しておく。
これで、1日最低3時間のノルマはなんとかこなせます。
で、数か月続けてみた結果、確かにリスニング力は若干伸びました。
けれども、やはりナレーションはナチュラルスピードとは言い難い。
映画やドラマを見るとまったく聞き取れないということに気付いたのです。
そこで、映画を借りてきたりドラマを録画したりして、ひたすら見続けました。
ところが、これがなかなか厳しい。
ナレーションと違い、ナチュラルな会話がポンポン出てくるドラマは、
内容がほとんど聞き取れないのでものすごくフラストレーションがたまるのです。
当時の私のTOEICのスコアは、大体800点近くありました。
それでも、ドラマや映画はずっと見続けるのは苦痛だったのです。
そこで挫折してしまいました。
やはり、スクリプト(脚本)を見ながらちゃんと話を追っていくことにしました。
でないと、ストレスがたまるからです。
なので、いわゆるヒアリングマラソンや聞き流すだけの学習法は、
初中級者には不向きだという結論に至りました。
人間は、大人になると意味のわからないことや内容の理解できないことをひたすら聞き続けるのは、
非常に苦痛で、それを数時間も続けられるだけの超人的な忍耐力のある人は、
おそらく本当に一握りのスーパーマンだけだからです。
上級者におススメするのは、スクリプトを見ながらドラマや映画を見ることです。
そこに出てくる知らない語彙やイディオムをきちんと調べて理解する。
そういう細かい作業をしない限り、聞き取れるようにはまずなりません。
あなたがスーパーマンで、1日3時間意味不明の映像を延々と見ることができるというなら話は別ですが。
中級者は、ナレーションやインタビュー形式の素材を聞く(見る)のがいいでしょう。
NHKの講座などもいいと思います。
今はYOU TUBEがあるので、政治家のスピーチや有名人のインタビューも見ることができます。
このあたりから入るのが良いでしょう。
アップル社のCEOである、Steve Jobsのスタンフォード大学でのスピーチです。
字幕付きなので、良い学習教材になると思います。

最後に、初級者に適した学習法ですが、初級者はまずはインプットです。
語彙、イディオム、文法をもう一度ザッとおさらいすること。
中高の参考書をやり直すのが、いちばん手っ取り早く効果的です。
その作業を飛ばして、何時間英語を聞き続けたところでわかるようにはなりません。
あなたがスーパーマンだというのなら別ですが。
アメリカに10年以上住んでいても、いまだに英語がまともに話せない人を何人か知っています。
彼らは本当に簡単なフレーズしか話せませんし、電話に出ることすらためらうのです。
電話でナチュラルスピードで話されると何を言っているのかわからないからです。
また、映画も映画館では絶対に見ません。
字幕がないから理解できないのです。
レンタルしてきたDVDを字幕付きで見ています。
ただ聞き流すだけで英語が話せるようになるのであれば、
こういう人たちは存在しないはずです。
英語学習に楽な道はありません。
楽な道を取ったはずなのに、結局は迷路に入り込んでしまった。
なんてことにならないよう、しっかりと足元を見て進んでいきましょう。
ダウン語学に王道はなし音譜
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