英語学習者が陥りやすい落とし穴はなんでしょう?
前回も少し触れましたが、英語はスポーツや楽器に似ていて、でもある点において決定的に異なります。
まず、語学には絶対的な才能というものは必要とされません。
人は誰しも、訓練すれば必ず母国語以外の言語を話すようになります。
スポーツには、持って生まれた身体能力というものがどうしても影響していて、
必ずしもみんなが一流(二流でも)プレーヤーになれるわけではありません。
楽器にしてもそうで、コツコツと練習したからといって、
また、小さい時から良い先生について習ったからといって、
誰もがショパンのバラードを人前で演奏できるようなレベルになるわけではありません。
そこには、才能という壁が立ちはだかっているように思われます。
けれども、英語はそうではありません。
言語は、小さいうちから使えば誰でもバイリンガル、マルチリンガルになります。
また、大人になってからでも根気よく続ければ必ずマスターできます。
もうひとつ、英語がスポーツと違う点があります。
それは、英語は階段を一歩一歩上っていくわけではない、ということです。
これができたから次はこれ、で、それがマスターできたら次はこちら、
というように一歩ずつ前に進みレベルが上がって行く。
そういうふうに想像する人が多いと思いますが、実際は違います。
英語学習は、低い山をゆっくり上るようなものです。
途中、下り坂があったり水辺があって迂回しなくてはならなかったり、
鬱蒼とした林の中で、自分がいったい上に上っているのか、
それともただやみくもに同じところをグルグル回っているだけなのかわからず、
思わず不安になってしまう。
けれども、ふと気付くと景色が変わっている。
数時間前に見た景色よりも、上に来ている。
さっきはもっと大きく見えた民家も、今はずいぶん小さく見える。
ああ、自分はかなり上まで上ってきたんだなぁ、とその時初めて気づく。
そういうものなのです。
一歩一歩コツコツと階段を上るイメージを描いている人は、
語学をやっていると、フラストレーションがたまるかもしれません。
これはどうしてこうなるんだろう、わからないから前に進めない。
そんなふうに考えてしまう人は、まずその認識を変えてください。
今はわからないけれど、とりあえずそこはそのまま置いといて、別の角度から責めてみよう。
わからないところは飛ばして、先に進んでしまおう。
そうこうするうちに気付けば似たようなところに戻って来て、
ああ、あの時はよくわからなかったけれどこういうことだったのか!
とわかるようになります。
ひたすら上を向いて階段を上るのではなく、色んな景色を眺めながら、
時には脱線したりしつつ上って行く。
それが、語学学習というものなのです。
それから、これも語学習得に重要なポイントですが、
理屈でわかろうとあまりしないほうがいいということです。
これはどうしてこうなるのだろう、なぜだろう、と考え込んでしまいがちな人は、
とりあえずよくわかんないけどそういうもんなんだ、と割り切って覚えてしまいましょう。
そうすることで、何度も似たような表現が出てくると自然と慣れていきます。
最後に、リスニングに関してひとつ大切なポイントを書いておきます。
まずは、モデル(先生)の英語をよく聴いてください。
これ、非常に重要です。
聴いて真似る、というのが語学の基本です。
モデルの音を注意深く聴くことも大切ですが、自分の発音をよく聴くこともまた大切です。
リスニングが苦手、発音が苦手という人に共通してみられるのが、
モデルをリピートする時、非常にぞんざいに読んでいるということです。
個々の音、イントネーション、リズムを、モデルと同じように再生していますか?
とにかく早く言ってしまおうとするあまり、音が流れていませんか?
チャンスがあれば、携帯などで自分の音を録音してみてください。
そして、モデルのそれと聴き比べてください。
どこがどう違うか、自分でわかりますか?
わかる人は、上達が早いと思います。
モデルと似ていないところを直していけばいいだけですから。
聴き比べてもわからない人は、やはりコーチが必要です。
そして、コーチに付いた際は、その人の発音や声の出し方をよく聴くようにしましょう。
コーチが言い終わるか終わらないかのうちに、それにかぶせるようにリピートする人は要注意です。
ちゃんと聴いていない(聴けていない)可能性が高いからです。
最後に、語学にもセンスのあるなしは確かにあります。
センスのある人は、音に対して敏感な人、自分の声を聴ける人です。
そういう人は、普通の人よりも楽に語学がマスターできるでしょう。
けれども、そうでない人も、時間をかけて訓練することで誰でも話せるようになります。
焦らず、かといってのんびり構えるわけではなく、それなりに集中してやりましょう。
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