発音クリニックをしていて思うのが、本当にローマ字の弊害は大きいなということです。
日本人がLとRが苦手なのは、ローマ字ではら行をRで表記することが原因です。
日本語のら行は、RよりむしろLに近い音です。
たとえば、ラララララ~と歌う時、舌が口内の天井に着きますよね?
英語のLも同じです。
la la la la la…..と歌う時は、舌は天井に着いています。
日本でも人気の、Minnie Ripertonの“Lovin’ You”を聴いてみましょう。

始まって45秒くらいのところで、la la la la la…とスキャットしていますね。
口元に注目してください。
舌が動いているのが見えるでしょう?
英語のLは、日本語のら行よりもこの舌の動きがダイナミックなんですね。
トスを上げられたボールをポンッとスパイクするように、
舌を天井にポンッ、ポンッ、ポンッ、と打ちつけるようにして、
ラッラッラッラッラッ~と言ってみましょう。
鏡で自分の口元を見ながらやってみるといいと思います。
日本語のラは、ミニー・リパートンのスキャットのように派手に舌が動かないはずです。
また、日本語のラは、舌全体をべちゃっと天井に着ける感じですが、
英語のLは舌先を上歯の付け根あたりに勢いよくポンッと打ちつけます。
その違いに注意して練習するといいでしょう。
Rは、舌が口の中でほとんど動きません。
発音する際に、舌が口の中のどこかに着いていたら、それは正しく発音できていないということ。
喉の奥(声帯、喉仏のある位置よりさらに奥)を鳴らして出す音です。
なので、日本語のらりるれろとは全く違う音なんですね。
英語ネイティブが苦手とする日本語の発音に、りゃ、りゅ、りょ、があります。
亮平とか良一とか涼子といった名前が発音できないんですね。
その理由は、喉発声ができる人であればすぐにわかると思います。
りゃ、りゅ、りょ、は舌が天井に着かないと出せない音です。
そして、同時に喉を締めないと発音することができません。
Lのように、舌先だけをポンッと打ちつけては発音できない。
まして、Rは舌をどこにも着けないので無理。
にもかかわらず、日本語では涼子という名前を「Ryoko」と表記するんですね。
ローマ字が頭にこびりついていると、英語発声ができない。
・・・と、前置きが長くなりましたが、
発音教育において、Phonicsというものがあります。
これは例えば、
アルファベットひとつひとつの音を正確に発音できるようにし、
文字の組み合わせによって、規則的にこう発音するんだというのを学んでいくやり方です。
どうものかピンとこない人は、こちらの元気イングリッシュ!さんのサイトを見てみてください。
どうでしょう?
なんとなくどういう感じかつかめましたか?
リチャードさんは何度か児童英語学会で会ったことがありますが、
ご本人自身がとても元気な方でした。
ところで、このフォニックスですが、私は個人的には、
大人の学習者にはあまり効果がないと思っています。
というのも、フォニックスは、元々英語ネイティブの子供たちが読み方を習う時の方法だからです。
つまり、日本人の子供が、小学校に上がってひらがなを習うのと同じで、
話せることが前提の学習方法なのです。
思いだしてみてください。
5歳くらいの頃、すでに普通に言葉を話していましたよね?
けれども、まだ文字は読めなかったはずです。
ひらがなくらいなら、親に教えてもらったりして少しは読めたかもしれませんが。
小学校に上がり、ひらがなを習って初めて、
春になると咲くあのピンクの美しい花は「さくら」と三文字で書くのだ、
ということを知るわけです。
英語も同じで、ミャウミャウ鳴く可愛い動物は、C-A-Tと書く、と習うのです。
けれども、大人の日本人は既に猫をC-A-Tと綴ることは知っています。
そしてそれは、キャットという極めて記号的なカタカナ発音として、
すでに脳内に刷り込まれてしまっています。
Cはクッ、Aはエァ、Tはトゥッ、だからそれが繋がるとケェアァットゥッとなる、
というフォニックスのやり方は、
九九を知らないのに、12と28の最大公約数は4ですよね、
と教えるようなものなのです。
発音記号も同じで、一つ一つの音を正しく発音できることが前提で作られています。
[ i ]と書いてあっても、この音を発音できなければ意味がないのです。
big と pig は、[big] と [pig]だから最初の音以外は同じ発音だ、
というように理論で理解することはできても、それを発音することはできません。
絶対音階があるからといって、パーフェクトな音程で歌えるわけではないのと同じです。
サッカーの試合を見ながら、そこはこう動けよ!ダメじゃんそっちに行ったら!
とかなんとか、突っ込みを入れることはできても、
自分はその100分の1も動けないのと同じことなのです。
フォニックスは、まだローマ字を知らない子供には有効でしょう。
ただし、正しい発音ができる人に習わないと意味がないのです。
子供にフォニックスを習わせている人は注意してください。
子供の耳はごまかせません。
ローマ字に汚染されていませんから、これとこれは同じ音だよ、と言っても
少しでも違ったら「ええー、同じじゃないじゃん」と思われてしまいます。
ローマ字の弊害をどうやったら効率よく取り除けるか。
これについては、またお話したいと思います。
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